暗号資産のコンプライアンス孤高の戦士：Circle CEOはどのようにTetherの包囲網と金利低下という二重の圧力を突破するのか？

執筆：Olga Kharif
翻訳：Saoirse，Foresight News

6月5日、Circle CEOのJeremy Allaire（中央）がニューヨーク証券取引所でのIPOセレモニーに出席。撮影者：Michael Nagle / Bloomberg

要点：

• Circleはステーブルコイン分野で最も成熟した企業の一つであり、CEOのJeremy Allaireもすでにビリオネアとなっているが、彼にはまだ証明すべき道が残されている。
• Circleは多方面からの圧力に直面している。市場競争が激化し、主要な収益源は金利低下により危機に瀕しており、最大の競合相手であるTetherが米国市場に再参入している。
• Allaireは自身の戦略とCircleが最終的に勝利すると確信しており、水曜日に発表される決算は、その戦略の有効性を証明する新たな機会となる。

Jeremy Allaireには、まだ証明すべき道が残されている。

Circle Internet GroupのCEOとして、彼が率いる会社は暗号資産分野の最新トレンドであるステーブルコイン分野のトップ企業の一つだ。彼が長年推進してきたビジネスモデルは、トランプ大統領の署名による法案で正式に法的枠組みに組み込まれた。また、Circleが今年6月にIPOを開始したことで（このIPOは2025年の暗号資産業界の上場ブームを引き起こした）、Allaireはビリオネアとなった。

しかし、この54歳のCEOは業界内で広く認められることが難しく、Circleも多方面からの圧力に直面している。会社が置かれている市場は極めて競争が激しく、主要な収益源は金利低下により縮小リスクに直面している。同時に、最大の競合相手であり、収益力と評価額の両方でCircleを大きく上回るTetherが米国市場に再参入している——これはCircleの本拠地にとって明らかに危険信号だ。

伝統的な銀行家たちはAllaireを脅威とみなし、ステーブルコインが銀行預金を奪うことを懸念している。一方、暗号資産業界の同業者たちも彼を敬遠している。フーディ姿が多い業界カンファレンスで、彼はいつもスーツ姿の「異端児」だ。さらに重要なのは、彼がコンプライアンス運営を堅持し、立法機関に業界ルールの制定を積極的に推進していることだ。

匿名性、独自性、伝統的金融システムの破壊を誇りとするこの業界で、こうした理念はAllaireに「人気投票」で勝利をもたらすものではない。

「Jeremy Allaireの戦略路線は常にbitcoinエコシステムと対立してきた」と、bitcoin投資プラットフォームSwan Bitcoinの責任者Cory Klippstenは語る。「bitcoinの目標は通貨と国家の分離だが、彼の仕事の核心は暗号技術を既存の法定通貨システムに組み込むことだ。」

批判の声が絶えない中でも、Allaireは自身の戦略とCircleが最終的に勝利すると確信している。会社は水曜日に決算を発表する予定であり、これは彼が戦略の有効性を証明する新たな機会となる。

「やり続けるには、自分がしていることの重要性に強い信念と深い道徳的基盤を持たなければならない」とAllaireはインタビューで語った。「挫折に直面し、誰もが『君は間違っている』『失敗する』と言うだろう。しかし、私にとってこれは単なるビジネスプランではない——私はこれが本当に世界を良くできると信じているからやっている。」

AllaireのCircleでのキャリアは波乱に満ちている。この会社は2013年に設立された。

Circleは当初bitcoinネットワークを基盤とした決済プラットフォームだったが、その後何度も戦略を調整し、破産寸前に陥ったこともあり、Silicon Valley Bankの破綻では資金難に直面した。主要なステーブルコインUSDCの運営体制を維持するため、Allaireは最終的に資産売却や数百人のリストラを余儀なくされた。

「Circleが危機に陥ったとき、誰も私が乗り越えられるとは信じていなかった」とAllaireは振り返る。「でも、私は全力を尽くした。」

成長の課題

現在、Allaireが直面している課題は「生き残り」から「成長力の証明」へと移っている。

Circleのようなステーブルコイン発行会社の主な収益源は、準備金を米国債など短期キャッシュ類資産に投資することだ。金利が低下する中、たとえCircleの収益が増加しても、投資単位あたりの利益はほぼ確実に減少する。

さらに、AllaireがCoinbase Global Inc.と結んだ収益分配契約も、Circleの利益幅を大きく圧迫している。2025年第2四半期には、Coinbaseに支払う流通手数料がCircleの調整後利益1億2600万ドルの3倍以上となった。対照的に、同等のルールや監査要件を守る必要のないTetherは、同期間の利益が49億ドルに達したと発表している。

時価総額ランキング上位5つのステーブルコイン

単位：十億ドル

データ出典：CoinGecko

TetherのUSDTはCircleのUSDCより数年早く登場し、規模もはるかに大きい——USDTの時価総額は1830億ドル、USDCは760億ドルにとどまる——そのため収益力も高い。また、Tetherは米国商務省長官Howard Lutnickがかつて在籍していたCantor Fitzgeraldと関係がある。

もう一つの新規参入ステーブルコイン競合であるWorld Liberty Financial Inc.は、トランプ家と関係がある。ステーブルコインの利用量が急増する中、TetherやWorld Libertyを含む数百の企業がCircleの市場シェアを争っている。Allaireは最近の決算電話会議で、この分野は「勝者総取りの市場」だと率直に認めた。

現在、Allaireは他の事業を通じてCircleの新たな収益源を開拓しようとしているが、ウォール街のアナリストたちはこの試みの効果に懐疑的だ。最近の試みには、ブロックチェーン、決済ネットワーク、トークン化マネーマーケットファンドの立ち上げが含まれる。

それでも、みずほ証券のアナリストDan Dolevは「USDCは単なる別のステーブルコインに過ぎず、特別な点はない。Circleの株は過大評価されている、それだけのことだ」と断言する。Circleを追跡するアナリストのうち、4人が「売り」評価、11人が「買い」評価、10人が「ホールド」評価を出している。

現在、Circleの株価は約104ドルで、IPO発行価格の31ドルを大きく上回っているが、上場後のピークの半分にも満たない。その240億ドルの時価総額は、Tetherの現在の資金調達活動が示唆する5000億ドルの評価額と比べると、見劣りする。

テクノロジー起業家としての出自

Allaireは過去に2社を上場させた経験がある——ソフトウェア企業Allaire Corp.と動画プラットフォームBrightcove Inc.——が、Circleは彼のキャリアの中核的な遺産となることはほぼ間違いない。

Allaireのテクノロジーへの関心は子供時代に始まった。11歳の時、家族はミネソタ州の小さな町Winonaに引っ越し、彼と弟のJJは「少しオタクっぽい」子供だった——彼らは機械語のプリントアウトを手に、1文字ずつコンピュータにゲームを打ち込んでいた。「1文字でも間違えるとプログラムは動かないから、ものすごく集中しなきゃいけなかった」と彼は振り返る。

成人後、Allaireは完全にインターネット分野に身を投じた。政治活動家Noam Chomskyの著作のデジタル化を手伝ったこともある。その後、いくつものスタートアップを立ち上げた。Brightcoveを去った直後、親友のSean NevilleとともにCircleを創業した。

「当時はよく彼の家に入り浸っていた」とNevilleは振り返る。「僕らの究極の目標は、まったく新しい金融システムを作ることだった。」

2025年7月18日、米国大統領トランプがホワイトハウスで「GENIUS法案」署名式を開催、Circle CEOのJeremy Allaire（右上）が出席。撮影者：Francis Chung / Politico / Bloomberg

Bloomberg Billionaires Indexによると、Allaireの現在の個人資産は21億ドルで、その大部分はCircleの持ち株による。この数字はTether CEOのPaolo Ardoinoの56億ドルには及ばないが、Apple CEOのTim CookやBlackRock CEOのLarry Finkなど米国企業界の著名人と肩を並べる。

Allaireは、自身が「進歩的な価値観」の家庭で育ったと語る——両親はともに社会福祉や社会活動に従事していた——が、ホワイトハウスでの「GENIUS法案」署名式に出席し、トランプと握手した経験については絶賛している。この法案はステーブルコインのための連邦規制枠組みを確立した。

「その場に参加できて、私は非常に光栄で興奮した」とAllaireは語る。「署名で法案が成立し、私はその過程で重要な役割を果たせた——これは私の人生で最も意義深い瞬間の一つだ。」

公開記録によると、Allaireは長年民主党を主に支持してきたが、Circleはトランプの就任委員会に100万ドルを寄付したことがある。

フィットネスライフスタイル

数年前、Allaireはフィットネスプランを始めた。アルコールを断ち、健康的な食事に気を配り、健康アプリのデータによれば、現在は平均して毎晩7時間の睡眠をとっている。

6月5日、Jeremy Allaireがニューヨーク証券取引所でのCircleのIPOセレモニーに出席。撮影者：Michael Nagle / Bloomberg

現職・元職の従業員は、Allaireを「穏やかだが厳格」な上司と評価している——彼は怒鳴ったり机を叩いたりせず、オフィスで遅くまで残業することもないが、ほぼいつでも素早くメッセージに返信する。ある人は、森の中を散歩しながら彼と戦略会議をしたことを思い出している。

現在、Allaireは次のステップを計画している。

「インターネット上に通貨レイヤーを構築することが1.0段階の目標だった」とAllaireは語る。「私たちはすでにこれを実現し、今は2.0と3.0段階の計画を進めている。」