イタリア銀行界がデジタルユーロ支持　導入コストは段階的負担を要請

欧州金融の主導権を守るための現実的な歩み

ECB （欧州中央銀行）が進めるデジタルユーロ構想に対し、イタリアの銀行は「支持」の立場を明確にしている。

ただし、導入に伴う初期費用が銀行側に集中することへの懸念から、コストを複数年に分散する仕組みが必要だと訴えている。プロジェクトは2027年の試験段階、2029年の本格導入が想定されており、欧州のデジタル金融政策の中核を担う施策として注目が集まる。

ABI（イタリア銀行協会）は、デジタルユーロを「欧州の金融主権を強化する手段」と位置づけている。これは現金を置き換えるものではなく、既存の決済手段を補完し、安全性と利便性を高めるCBDCとして設計されている。ABIのマルコ・エリオ・ロッティニ（Marco Elio Rottigni）氏は、デジタルユーロの導入は欧州のデジタル主権を守るうえで重要だと 述べた うえで、銀行側にはシステム整備や運用に一定の負担が生じる点にも言及した。このため、導入費用は一度に求めるのではなく、複数年に分散して段階的に進める枠組みが必要だと強調している。

欧州内で意見が分かれる中、協調と競争の均衡が課題に

イタリアが積極姿勢を見せる一方で、欧州の全ての銀行が同じ立場ではない。

フランスやドイツの一部金融機関は、デジタルユーロを通じたリテールウォレットが預金流出を招き、商業銀行の役割を弱める可能性を懸念している。また、欧州議会のフェルナンド・ナバレテ議員は、既存の民間決済サービスと競合しないよう、デジタルユーロの提供範囲を慎重に設計すべきだと指摘する。

こうした制度面・産業面での議論が続く中、ECBは実用化に向けた技術面の整備を進めている。不正検知やオフライン決済などの基盤機能を強化する技術検証が行われており、導入プロセスは段階的に進められている。セキュリティとプライバシー保護を前提とした運用体制の構築が、今後の中心的な課題となる。最終的には、デジタルユーロが欧州全体で利用可能な決済インフラとして定着することが目指されている。

デジタルユーロの成否は、技術的な実装だけでなく、公的デジタル通貨と商業金融の役割分担をどう設計するかに左右される。イタリアが提案する「中央銀行デジタル通貨と商業銀行デジタル通貨のツインアプローチ」は、欧州全体における折衷案となり得るか注目される。