FusakaはユーザーをL2に留めるのか？今後のEthereumアップグレードで最大60%の手数料削減を目指す

次の主要なEthereumアップグレードであるFusaka（「Fulu」（コンセンサス）と「Osaka」（実行）のハイブリッド）は、ユーザー体験の根本を変えることなく、ネットワークのデータと手数料の処理方法を変更します。

その裏側には、Ethereumのメインチェーンが最終決済およびデータ可用性のハブとして残り、日常的なアクティビティはより安価で高速なロールアップへと流れていくという方向性が示されています。

FusakaがLayer 1にユーザーを呼び戻すかという問いには、すでに答えが出ています。呼び戻しません。むしろLayer 2から離れるのがさらに難しくなります。

Fusakaの内部：基盤のスケーリングと体験の向上

Fusakaの技術的な中核は、データ可用性、サンプリング、そしてblob管理にあります。これは、EthereumがLayer 2へのデータ投稿をより安価かつ効率的にするためのアプローチです。注目の提案であるEIP-7594（PeerDAS）は、ノードがロールアップデータの断片（「blob」）のみをサンプリングできるようにし、すべてをダウンロードする必要がなくなります。

これにより、より多くのblob容量が解放され、バリデーターの帯域幅コストが大幅に削減されます。これはL2スループットをスケールさせるための前提条件です。

続いてEIP-7892が登場し、「Blob Parameter-Only」フォーク、すなわちBPOを導入します。これは、プロトコルを書き換えることなく、ブロックごとのblob数を段階的に増やす（例えば10から14、または15から21）仕組みです。

これにより、開発者は完全なアップグレードを待たずにEthereumのデータ容量を調整できるようになります。EIP-7918はblobのベースフィーの下限を設定し、需要が低い時にデータスペースのオークション価格がゼロ近くまで下落するのを防ぎます。

その他のアップグレードはユーザー体験と安全性に焦点を当てています。EIP-7951はWebAuthnで使われる暗号曲線secp256r1のサポートを追加し、Ethereumウォレットでパスキーによるログインを可能にします。EIP-7917は決定論的なプロポーザー予測を導入し、次のブロックを生成するバリデーターを事前に予測できるようにすることで、トランザクションの迅速な確定を実現します。

同時に、EIP-7825はトランザクションガスの上限を設けてDoSリスクを防ぎ、EIP-7935はバリデーターの安定性を維持するためにデフォルトのブロックガスターゲットを調整します。

これらのアップグレードはすでにHoleskyやSepoliaといったテストネットで稼働しており、メインネットでの有効化は12月初旬に予定されています。

Fusakaが手数料とロールアップ経済に与える影響

ユーザーにとって、FusakaはLayer 1のガス代が安くなることを約束するものではありません。Layer 2の手数料を下げるためのものです。ロールアップがより多くのデータを低コストで投稿できるようになることで、Arbitrum、Optimism、Base、zkSyncといったネットワークの経済性が向上します。

内部モデルによれば、ロールアップ手数料は通常の条件下で15%から40%下がり、blob供給が需要を長期間上回れば最大60%まで下がる可能性もあります。Ethereumメインネットのガス価格はほぼ横ばいのままですが、将来的にブロックガスターゲットが調整されればさらに10-20%下がる可能性もあります。

ただし、パスキーやプロポーザーのアップデートはEthereumの使い心地に大きな違いをもたらす可能性があります。WebAuthnサポートにより、ウォレットは生体認証やデバイスベースのログインを統合でき、シードフレーズやパスワードの煩わしさがなくなります。予測可能なプロポーザーによる事前確定が可能になれば、特にロールアップ上で日常的なトランザクションの即時確定が期待できます。

その結果、Ethereumの利用体験はよりスムーズになり、誰もL1に戻る必要はありません。レールはより速くなりますが、依然としてロールアップレーンに向かっています。
L1は決済、L2は体験

Ethereumのアーキテクチャはもはやモノリシックかモジュラーかの議論ではありません。選択によってモジュラーになっています。Layer 1の役割は高セキュリティな決済およびデータ可用性の基盤であり、実際のユーザーアクティビティはLayer 2に移されます。

Fusakaはこの分離を強化します。blob容量が増加すれば、L2はゲームやソーシャルアプリ、メインネットでは非経済的なマイクロトランザクションなど、より高いスループットを処理できます。ログインや確定ワークフローの改善により、これらのL2環境はネイティブかつ即時的に感じられ、かつてL1が有利だったUXギャップも解消されます。

ユーザーがLayer 1を選ぶ場面はどこでしょうか？それは高額決済や機関規模の送金、またはブロック順序の精度が重要な場合（例えばMEV管理やDeFiクリアリング）など、非常に限られたケースです。しかし、これらはオンチェーンアクティビティ全体のごく一部に過ぎません。それ以外はL2が自然な選択肢となります。

より大きなストーリー：レイヤードインターネットとしてのEthereum

俯瞰して見ると、Fusakaはガス最適化というよりも成熟化のためのものです。Ethereumに、破壊的なフォークなしでデータ容量（BPO）を調整できるスケーラブルな枠組みと、Web3をWeb2のように感じさせるUXレイヤーを提供します。

しかし、その哲学は明確です。ネットワークはメインネットにトラフィックを集中させようとしているのではありません。ロールアップがローカルトラフィックを処理し、L1が最終的な公証所として機能する高速道路システムを構築しているのです。

また、経済的な側面もあります。データ投稿のコストが下がれば、ソーシャル、決済、ゲームなどの新しい低価値アプリケーションがロールアップに戻ってくる可能性があります。これらは依然としてblob手数料を通じてETHを消費し、EIP-7918のフィーフロアにより、その手数料はETHのバーンに寄与します。ユーザーコストが下がっても、アクティビティが手数料の下落よりも速く拡大すれば、Ethereumのバーンレートはさらに上昇する可能性もあります。

バリデーター側では、PeerDASが帯域幅の負担を軽減しますが、フルblobデータを保存する「スーパーノード」への新たな依存が生まれるかもしれません。これは分散化のトレードオフであり、データ可用性をスケールさせつつ参加者を狭めない方法について、コミュニティで議論が続くでしょう。

Ethereumがここで取っているバランス、すなわちスループット、使いやすさ、信頼性の間のバランスは、暗号インフラ全体の方向性を反映しています。L1は安全な基盤として強化され、L2は実験とスケールを吸収します。
まとめ

FusakaはEthereumメインネットの注目を取り戻すためのものではありません。むしろその逆で、ロールアップ中心の未来のために基盤を強化するための意図的な動きです。

このアップグレードはデータ容量を拡大し、手数料を安定させ、ウォレット体験を近代化しますが、それは上位レイヤーのためのものです。EthereumのL1はより安全かつスマートになり、ユーザーはこれまで以上に安価で高速なL2で活動し続けます。

来年初めにBPO1とBPO2が展開される頃には、注目すべき本当の指標はblobの利用率と容量、L2手数料の圧縮、そしてウォレットによるパスキー採用です。その結果は、2026年にEthereumの使い心地がどれほどスムーズになるかを決定づけます。それは人々をメインチェーンに呼び戻すのではなく、オフランプをほとんど見えなくすることで実現されるのです。

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