インタビュー｜Web3の次のフロンティアはP2P取引：Yellow

Yellow NetworkのCaptainであるAlexis Sirkiaは、P2P取引がブロックチェーンを悩ませ続けるスケーラビリティ問題をどのように解決できるかを説明しています。

ブロックチェーンの普及は大きく進展し、政府や機関もその技術の可能性を認識しています。しかし、速度、スケーラビリティ、分散化といったコアな課題は依然として残っています。ネットワークのスケーラビリティは、計算能力への需要にほとんど追いついていません。

crypto.newsのインタビューで、Yellow NetworkのCaptainであるAlexis Sirkiaは、Web3インフラに欠けているレイヤーについて自身のビジョンを語りました。Sirkiaによれば、Web3には、セキュリティを損なうことなくブロックチェーンの負荷を軽減する、トラストレスなピアツーピア通信システムが必要です。

crypto.news: Web3やDeFiは、従来の金融、アプリケーション、中央集権型サーバーと比べてどのような利点がありますか？

Alexis Sirkia: 私が考える主な利点は「トラストレス」という考え方です。つまり、人間の仲介者に頼る必要がないシステムです。これはBitcoinやEthereumのような分散型アーキテクチャがもたらしたものです。これにより、従来は中央集権的な組織が管理していたプロセスを自動化するアプリケーションを構築できるようになりました。

Web3では、スマートコントラクトやDAOのような自律的な存在がビジネスロジックを管理し、人間が介在しません。これは非常に強力です。人間の監督に依存しない企業を想像してみてください。自律的かつ効率的に運営され、汚職やインサイダー取引、偏った意思決定のリスクもありません。

これが理想です。誰かが次のユニコーンスタートアップを構築し、スマートコントラクトを通じてローンチし、その後は自動で運営される。Uniswapのように、一度デプロイすればビジネスが自動で動き続けるのです。

つまりWeb3は、コンピュータがより良くできる作業から人々を解放するものです。コンプライアンス、信頼、監督といったものは、もはや人間の責任である必要はありません。

CN: このトラストレス性が有利に働く実際のユースケースにはどんなものがありますか？

AS: 例えばAmazonを考えてみてください。すでにある種のトラストレスな体験を提供しています。購入者が販売者から商品を購入し、Amazonが取引を円滑に進める仲介者の役割を果たしています。

しかしWeb3では、その役割をスマートコントラクトに置き換えることができます。中央集権的な権威は不要で、自律的なロジックによって、何か問題が起きた場合にも事前にプログラムされた明確なルールで対処できます。

Web3の約束は、もはや人間に頼らなくてもこれらの結果を保証できるということです。こうした企業は人間の介入なしで自律的に運営できます。それが強力な理由です。

人間の意思決定を排除するのではなく、信頼や執行、運営において人間への依存をなくすのです。コンピュータは腐敗しません。人間と数学のどちらを選ぶかと言われれば、私は数学を選びます。

もちろんトレードオフもあります。スマートコントラクトは人間ほど柔軟ではありません。例えばストライキで商品が遅延した場合、それは販売者の責任でしょうか？スマートコントラクトはその微妙なニュアンスを必ずしも理解できません。

人間は新しい、あるいは予期しない状況に適応できますが、スマートコントラクトはルールに従います。したがって現時点では、現実世界に存在するグレーゾーンを完全に置き換えることはできません。

CN: あなたの視点から見て、完全に自律的なWeb3アプリケーションへの道のりの現在地はどこでしょうか？

AS: 2000年のAIと同じ段階にいると言えるでしょう。

AIという概念は1960年代から存在していましたが、2000年当時はインフラがまだ十分ではありませんでした。ツールはあったものの、計算能力やプラットフォームが広く普及していませんでした。

Web3も今、同じような状況です。

「Web3」という言葉自体も2014年にGavin Woodによって初めて提唱されました。まだ約10年しか経っておらず、ようやくインフラが固まりつつある段階です。

Yellowで私たちがやってきたことは、この欠けていたインフラの一部です。そして今、Bitcoin、Ethereum、Yellowによって、次世代の自律的かつ分散型アプリケーションを構築するための基盤がほぼ完成しました。

CN: インフラに何が欠けていたのか、そしてYellowで具体的に何を構築しているのか、もう少し詳しく教えてください。

AS: もちろんです。BitcoinやEthereumによって、トラストレスなインフラの始まりができました。つまり、3者以上が関与する取引において仲介者が不要なシステムです。例えば金融取引では、送信者、受信者、そして銀行やクリアリングハウスのような第三者機関が存在します。Ethereumはその第三者をスマートコントラクト、つまりプログラム可能な裁判官に置き換え、コード通りに実行されることを保証します。

しかしWeb3スタックにまだ欠けていたのは、トラストレスなピアツーピア通信、つまり中央集権型サーバーや全てのステップでの完全なブロックチェーン検証に頼らず、2者間で直接かつ暗号的に安全なやり取りができる仕組みでした。これがYellowで構築したレイヤーです。これにより、2人または2つのシステムが第三者の常時監督なしにビジネスを行うことが可能になります。

CN: なぜそのピアツーピアレイヤーが重要なのですか？

AS: 現実世界のビジネスの多くは、当事者同士が直接やり取りします。店に行って商品を選び、最後に支払いをする——その時にシステムが決済されます。例えば税務当局は、あなたがリンゴやオレンジを手に取るたびに監視するのではなく、最終的な請求書と税金だけを気にします。

これまでのWeb3にはこのダイナミズムが欠けていました。代わりに、3万ものバリデーターがあらゆるステップ——すべてのアクションや握手——を検証していましたが、実際にはほとんどのやり取りでそこまでの監督は不要です。

Yellowで私たちが作ったのは、BitcoinのLightning Networkに似た仕組みですが、Ethereumやあらゆるスマートコントラクトチェーン向けです。これをステートチャネルと呼びます。2者間でチャネルを開き、一連の取引に合意し、それぞれをオフチェーンで暗号署名します。

例えば、あなたと私はbitcoinを10万ドルで取引することに合意し、次にEthereumを4,000ドルで取引する——各ステップを署名します。決済したい時だけブロックチェーンを使います。どちらかが約束を破ろうとした場合、スマートコントラクトが署名済みの証拠に基づいて判断し、不正な行為者にペナルティを課します。両者はコントラクトに担保を預けているので、ズルをするリスクも大きいです。

CN: 実際の利点は何ですか？

AS: つまり、毎回3万台のコンピュータを巻き込まずにトラストレスなビジネスができるということです。私はあなたを信頼する必要がなく、システムが何か問題が起きた時にスマートコントラクトがルールを強制してくれます。そして何よりも、そのスピードが圧倒的です。

光の速さで取引できる——ピアツーピアで、グローバルなコンセンサスは不要です。2者間だけのローカルなブロックチェーンのようなもので、完全なオンチェーンよりもはるかにスケーラブルです。

ここがポイントです。ブロックチェーンは本質的に処理能力に限界があります。高性能コンピュータとして作られていません。実際、現在のSolanaネットワーク全体の計算能力は、1984年のIntelプロセッサや1970年代のDEC VAXシステムよりも低いのです。誇張ではありません——それらのマシンは毎秒100万命令を処理できました。これはSolanaの現在の性能を上回っています。

つまり、ブロックチェーンが悪いシステムというわけではなく、アプリ全体を動かすためのものではないということです。コンセンサス、決済、仲裁のために必要ですが、重い処理はオフチェーンで行うべきです。Yellowでは、ブロックチェーンは必要な場面だけに使い、それ以外はより高速かつスケーラブルなピアツーピアレイヤーに移行しようと言っています。

CN: 技術的には情報はどこに保存されますか？取引に異議が出た場合、スマートコントラクトはどこからデータを取得して正否を判断するのですか？

AS: 良い質問です。ステートチャネル内のすべての取引は両者によって暗号署名され、前の取引への参照を含みます。まるでミニブロックチェーンのようです。新しい取引が前の取引に積み重なり、常に最新のものが有効となります。

異議が出た場合、スマートコントラクトはどちらが最新の署名済み証拠を持っているかを確認するだけです。そのバージョンが有効と見なされます。解決のためのロジックやルールは事前にスマートコントラクトに組み込まれているため、ほとんどの場合オラクルや外部入力は不要です。

CN: 最新の署名済み証拠さえあれば、どんな紛争も解決できるのですか？

AS: その通りです。両者が署名しているので曖昧さはありません。コントラクトは主張や議論には関心がなく、数学だけを見ます。それがトラストレスである理由です。そして、最終決済まで広範なブロックチェーンを巻き込まないため、全体のプロセスが非常に高速でネットワークの負荷にもなりません。

現実のビジネスでは、すべての握手を裁判所で検証することはありません——何か問題が起きた時や最終決済時だけ第三者が関与します。私たちはこれを暗号証明とスマートコントラクトで再現しています。「ネットワークを信頼する」から「最小限で検証可能なインタラクションレイヤーを信頼する」へのシフトです——これがYellowの提供するものです。

CN: あなたが構築したこのピアツーピアシステムの最も即時的または魅力的なユースケースは何だと思いますか？

AS: 最初は取引のためにこれを作りました——それが明らかでした。NADAsというブローカーとNLAXというプロトコルをこのインフラで構築しました。しかしYellow SDKを公開したことで、想像もしなかった多くのユースケースが生まれました。ETH Pragueのハッカソンでは、800人以上の参加者のうち2組のファイナリストがYellowを使っていました。これは素晴らしい検証です。

決済アプリ、取引アプリ、ゲーム——Tinder風の取引インターフェースからマルチプレイヤーのテトリス、さらには2人対戦のリアルタイムSnakeゲームまで見られました。ある開発者は週末だけでスワイプ型の取引UIを作り上げました。別の開発者はYellowを使ってウクライナのレイヴで即時決済システムを構築——混沌としたオフライン環境で実際の人々が暗号決済を利用していました。

この技術はウクライナの実際のレイヴでも使われました。Yellow上で構築された決済アプリにより、参加者はイベントでドリンクや商品を即座に支払うことができました。確認を待つ必要はなく、ただ速く、暗号的に安全な決済が行われました。紛争がなかったため、即座にオンチェーンで決済する必要もありませんでした。これこそが現実のビジネスのあり方です。

私たちは2か月後にメインネットをローンチします。しかしローンチ前から、すでに本物の開発者が本物のビジネスを構築しています。それを見るのは本当に素晴らしいことです。Korea Blockchain Weekでは、数週間前にヨーロッパのハッカソンでYellow上に構築したアプリをデモしている人を見かけました。これは現実離れした体験で、エコシステムはすでに私たちの先を行っています。

これはVitalikがEthereumを初めてローンチした時を思い出させます。当時、人々はそれが何のためのものか本当に理解していませんでした。私はプレセールの時に参加し、2万ETHを27セントで購入しました。Vitalikが2時間かけてビジョンを説明してくれたのを覚えています。革命的だと感じました。今も同じ感覚です。まだ多くの人が完全には理解していませんが、理解している人たちは非常に速く構築しています。

CN: 現在見落とされているトレンドや、今の議論に欠けている視点はありますか？

AS: あります。Bitcoinが始まった頃、本当にそれが何を意味するのか理解していた人はほとんどいませんでした。2013年、いやそれ以前から、私たちはBitcoinのミートアップを開催し、最初のクリプト企業をいくつか立ち上げていました。銀行員から「これは違法だから気をつけた方がいい」と言われたこともあります。それが当時の認識——危険で犯罪的、マイナーなものだというものでした。

人々は理解していませんでした。ほとんど全員が懐疑的でした。しかし、技術的なバックグラウンドを持ち、かつお金の歴史も理解していた私たち——私は宇宙センターでソフトウェアエンジニアをしていました——は違う見方をしていました。そしてそういう人はごく少数でした。技術と経済の両方を理解していた少数の人々が、初期に最大の賭けをし、その後大きな成功を収めています。

その後Ethereumが登場しました。そしてまた、多くのBitcoin支持者はそれを理解できませんでした。サウンドマネーにこだわるマキシマリストが多く、トラストレスというより広い概念には目が向いていませんでした。同じ原則がマネーだけでなく、契約やビジネス、アプリにも適用できることに気づかなかったのです。これは大きな意識の飛躍でした。

今、私たちは再び同じ場所にいます。多くの人はEthereumのコンセプト——プログラム可能な信頼——が、さらに一段深くピアツーピアシステムに拡張できることを理解していません。2人が直接ビジネスを行い、信頼もグローバルなコンセンサスも不要で、すべてのステップでそれを実現できるのです。