執筆：June，Deep Tide TechFlow
1500ドルを支払って、元Coinbase CTOのBalaji Srinivasanが設立した実験的コミュニティ「Network School」に参加するのは、果たして賢明な選択なのだろうか？
筆者は実際にマレーシアのフォレストシティにあるNetwork Schoolを訪れ、その真相を探った。
不動産ゴーストタウンにNetwork Schoolを建てる
2024年8月、BalajiはX（旧Twitter）で、Network Schoolが同年9月から12月までの90日間、試験運営を行うことを正式に発表した。
Balajiは投稿で興奮気味にこう述べている。「bitcoinの力によって、私たちは今、シンガポール近郊に美しい小島を手に入れ、そこでNetwork Schoolを建設している。」
この投稿はWeb3コミュニティで瞬く間に大きな注目と議論を呼び、Balajiの表現はこの「美しい小島」への期待を膨らませた。しかし、現実はそれほど単純ではない。
正確に言えば、Network Schoolはマレーシア・ジョホール州のフォレストシティに位置し、ジョホールバル中心部から車で約30分の距離にある。
フォレストシティは中国のCountry Gardenが開発した大規模プロジェクトで、4つの人工島から成る都市だ。しかし近年の不動産市場の低迷により、このマレーシアのプロジェクトも例外ではなかった。
この都市はBBCから「ゴーストタウン」と呼ばれ、近代的な高層ビルが立ち並ぶものの人影はまばらで、まるで見捨てられた都市のようだ。不動産市場の低迷とデベロッパーの苦境の縮図でもある。
優れた地理的ロケーション
否定できないのは、フォレストシティの地理的優位性だ。
フォレストシティからシンガポールまでは車で約1時間、Network Schoolはメンバー向けに専用の往復交通サービスも提供している。一方で、シンガポールとは狭い海峡を隔てているだけで、生活コストは比較的安い。シンガポールは国際金融センターかつテクノロジーハブであり、多くの暗号資産関連イベントや会議が開催されるため、Network Schoolのメンバーにとって学びや交流の絶好の機会となる。
しかし、理想と現実の間にはギャップがある。
地理的には優れているものの、日常生活の利便性はまだ大きく改善の余地がある。住民の日常の移動は主にGrabなどの配車サービスに依存しており、公共交通機関は十分ではない。この点がコミュニティメンバーの活動範囲や生活の利便性をある程度制限している。
このやや隔離され、荒涼とした環境が、ある意味でコミュニティ独自の雰囲気を醸し出している。
Network Schoolへようこそ
初めてフォレストシティを訪れる人は、目の前の光景に少し驚くかもしれない。
フォレストシティに足を踏み入れると、モダンさと荒廃感が同居している。
生い茂る緑が生命力を感じさせる一方、すでに営業を終えた店舗が対照的だ。各ビルのバルコニーには緑が植えられ、「フォレストシティ」の名の通り。中国的要素も随所に見られ、麻辣湯店、中華スーパー、赤い提灯、見慣れた中国語の看板など、中国の小さな町にいるような感覚になる。広い通りと点在する店舗には、世界中からやってきた探求者たちが時折行き交う。
Web3業界の関係者にとって、このような強烈なコントラストは決して珍しくないだろう。
中国国内でも「地理的アービトラージ」を選ぶ人は少なくない。例えば、大理の洱海のほとりでコードを書いたり、アナヤの海辺でオンライン会議をしたり、鶴崗で大都市の10分の1のコストでリモートワークを維持したりしている。
フォレストシティの荒涼とNetwork Schoolの活気は、まるでWeb3業界そのもののようだ。主流の視野の外で、一部の人々が廃墟の上に何かを築いている。
ここに集まる人々は、似たような軌跡を持つことが多い。伝統的なテック企業の過度な競争に疲れ、Web3の未来に信念を持ち、より低い生活コストでより大きな起業の自由を求めている。彼らはシンガポールでToken2049に参加した後、この静かな小島に戻ってコードを書き続けるかもしれない。
Balajiが手掛けたこのコミュニティは、最もあり得ない場所でWeb3のユートピアを創造しようとしている。
ようこそ、Network Schoolへ――世俗に定義されず、新時代のハーバードを目指す理想郷へ。
生活コストと宿泊アレンジ
Network Schoolの主なコミュニティ活動は、コミュニティセンターとホテルエリアの2カ所を中心に展開されている。
アパートの1階に設けられたコミュニティセンターには、会議室やコワーキングスペースが備えられている。
Network Schoolの常設拠点は海辺のホテル内にあり、短期参加者は通常ホテルの客室に宿泊する。他の公共施設（ジム、会議室、Network School専用カフェ、図書館など）もホテル内に集約されている。
生活コストについては、現在ダブルルームの月額料金は1500ドルで、宿泊、1日3食、ジム利用権、すべてのコース参加費が含まれている。Network Schoolは年中無休でオープンしており、参加者は自分のニーズや計画に応じて柔軟に滞在期間を選べる。
短期参加者、例えば1カ月だけ滞在するメンバーは設備の整ったホテルの客室に宿泊し、長期滞在を選ぶメンバーはより快適な2LDKアパートに住み、より広い生活空間を享受できる。
食事面では、コミュニティが1日3食を提供。朝食と夕食はビュッフェ形式、昼食は弁当ボックス。特筆すべきは、コミュニティがBryan Johnson（Blueprint創業者）の健康食プランを採用し、栄養バランスと健康的なライフスタイルを重視している点だ。
Network Schoolのジムも大きな魅力の一つ。ホテルの空き地にゼロから作られたジムで、各種設備が揃い、メンバーは自主的にトレーニング活動を企画できる。
Network Schoolの運営哲学は、Learn（学ぶ）、Burn（燃える）、Earn（稼ぐ）、Fun（楽しむ）の4つのコア理念に基づいている。ここでの典型的な1日は次のような流れだ：
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早朝：起床、ジム、Blueprint食プランの朝食。
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午前：コワーキングスペースへ行き、それぞれリモートワークに集中。
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午後：読書会、Vibe Coding、AI現状ディスカッション、DeFi 101コース、または自由なサイドプロジェクト。
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夜：コミュニティディナー、自発的な小規模イベント。
ダークタレントの集う場所
「多くの人はNetwork Schoolを学校だと思いがちですが、実際は志を同じくするWeb3関係者のためのコミュニティに近いです。ここには固定の時間割もなく、学びは自由です」とNikkiは説明する。
フィリピン出身のNikki（@nikkideyy）は今年6月からここで生活しており、すでに4カ月が経過している。
Network Schoolにはカリキュラムや統一された学習課題はない。しかし、コミュニティは時折、ウェブサイトの技術的な脆弱性を発見したり、プロモーションコンテンツやショート動画を制作したりといった面白い学習チャレンジを投げかける。ここの「教育」は、むしろ継続的な共同探求のプロセスに近い。
Nikkiによると、現在のコホートは270人で、これまでで最大規模だ。Network Schoolは2つの発展段階を経ている。第1段階は2024年9月23日から12月23日までの90日間の試験運営期間。
第2段階は2025年3月1日から正式運営に入り、この段階は「Society-as-a-Service」（社会即サービス）と呼ばれ、より体系的に「社会構築者」を育成し、将来の常設キャンパスに備えることを目標としている。
「デジタルノマドもいれば、オフィスをここに移した人もいます。加速器やインキュベーターのプロジェクトもあり、Solana SuperteamやMonad Residencyなどもここを拠点にしています。」
Solana Superteamシンガポールチームは5月から6月にかけてNetwork Schoolで6週間のIgnitionインキュベーションプログラムを実施し、Monad Founder Residencyは今年8月に3週間のレジデンシープログラムを行った。
Network Schoolの参加者にとって最も重要なのはコミュニティの雰囲気だ。志を同じくする人々と共に生活し、学び、交流することが最大の魅力である。Nikkiも「私は何かを創りたい、何かに参加したいという分岐点にいて、Network Schoolは自分の将来を探る完璧な機会を与えてくれた」と語る。
彼女の感想は、Network Schoolのコアバリューを反映している。ここはダークタレント（Dark Talent）、伝統的な教育システムに受け入れられなかったが未来を創造したいと願う人材の集う場所だ。彼らはイノベーション思考と実行力を持ちながら、非伝統的なバックグラウンドゆえに主流社会で見過ごされがちだ。
人によってこのプラットフォームの使い方はさまざまだ。オフィスを直接ここに移す人もいれば、次のステップを探るための中継地点とする人もいる。
Network SchoolはWeb3文化と起業の交差点となりつつある。
プレジデンシャルスイートの眺め
ホテルの応接室は今やNetwork Schoolメンバーの活動拠点となっている。Nikkiは最大の応接室であるプレジデンシャルスイートも案内してくれた。ホテルは海岸沿いにあり、バルコニーからは対岸のシンガポールがはっきりと見え、フォレストシティの景観や遠くにそびえる高層ビル、広大に計画された住宅地を一望できる。しかし残念ながら、これらの建物の多くはまだ空き家のままだ。
プレジデンシャルスイートからの眺め（筆者撮影）
この点についてNikkiは、友人と近くの住宅地を朝ランニングした際、ほとんどの家が無人だったと語る。Nikkiは、普通のランニングが思いがけず冒険的な体験になったと笑う。
実際、Network Schoolの立地そのものが大きなセールスポイントだ。車でフォレストシティに入ると、高層ビルが並ぶ壮観な光景が広がり、周囲の平坦な地形と対照的である。ホテルの入口にはNetwork School専用の看板が目立ち、ロビーに入ると大きな窓の前にモダンなNS Cafeが広がる。
大きな窓の前にあるNS Cafeは、メンバーに無料のコーヒーと飲料水を提供している
筆者のあとがき
出発前から、筆者はフォレストシティの話を多少耳にしていた。最も印象的だったのは、2年前にSNSで広まった「ゴーストタウン」の映像だ。映像では、フォレストシティは荒れ果て、暗く、店舗の看板も落ち、まるでゴーストタウンのようだった。
だからこそ、筆者はこの地に設立されたNetwork Schoolに強い興味を持った。
車でフォレストシティに入ると、まず目に入るのは映画のワンシーンのように並ぶ高層ビル。到着後、まずアパートの下にあるコミュニティセンターを見学した。センターの新しい外観と周囲の廃れた店舗が非常に対照的だった。
その時、「Network Schoolとは本当にこれだけなのか？」と疑問に思った。
しかし、Network School常設ホテルに行ってから印象が一変した。ロビーに入ると、メンバーたちがカフェで静かに仕事をしており、大きな窓の外には青い海が広がる。Nikkiは会議室、レストラン、図書館、ヨガスタジオ、ジムを案内してくれた。すべての施設はメンバーに開放されており、メンバーは自主的にクラブやスポーツ活動を立ち上げることもできる。
Nikkiは同じくPudgy Penguinsホルダーの仲間とPudgy NSを設立し、Pudgy Partyイベントを開催した
6月から入居して以来、Nikkiは最近ますます多くの店舗が営業を始めていると語る。現地を訪れてみると、フォレストシティはネットで言われているほど荒廃しておらず、汚れてもいない。至る所でスタッフが落ち葉を掃除し、ビルには警備員がいて、メンテナンススタッフも建物の設備を維持している。
では、1500ドルを支払ってNetwork Schoolに参加する価値はあるのか？
その答えは、料金の高低ではなく、あなたがこの「ダークタレント」たちと共に、ここでデジタル時代のユートピアを築く意志があるかどうかにかかっているのかもしれない。
