仮想資産ベンチャーキャピタルの「制約」が解除、韓国の暗号資産スタートアップに春が訪れるのか？

著者：Zen，PANews

 

7年ぶりに、韓国の仮想資産企業はついに「ベンチャー企業」としての地位を回復し、技術系スタートアップおよび成長企業として、ベンチャーキャピタル、技術保証、政策金融などの支援を受けることができるようになりました。

暗号資産企業に門戸を開いたのは、韓国中小企業ベンチャー企業部と内閣が9月9日に可決した「ベンチャー企業育成特別法施行令」の改正案です。これにより「ブロックチェーン/仮想資産（暗号通貨）の取引および仲介」が「制限/投資禁止」業種リストから削除され、9月16日に正式に施行されます。

7年間の制限令とほぼ「消滅した」韓国の暗号スタートアップ

2018年10月、韓国政府は投機抑制、個人投資家保護および金融安定の観点から、仮想資産関連事業を「ベンチャー企業育成特別法施行令」の「制限/制限業種」リストに加えました。ナイトクラブやカジノなどと同様に、当時の規制当局は暗号通貨を「高リスクで認可できない分野」と見なしていました。

当時、韓国政府の厳格な規制には一定の合理性もありました。世界的なブームの中、韓国内では「詐欺」や「偽プロジェクト」の事例が多発し、数千人もの韓国の個人投資家が損失を被りました。

例えば、Shinilグループという会社が「Shinil Gold Coin」を発行し、購入者にはロシアの沈没船から得られる大量の金を約束すると宣伝しました。このトークンは1年以上の間に約10万人の韓国投資家から5,370万ドルの投資を集めました。しかし、同社のCEOは後に「船に価値のあるものが積まれている確かな証拠はない」と認め、この詐欺事件で2,600人以上の投資家が少なくとも800万ドルの損失を被りました。

このような事件は後を絶たず、被害額は数十万ドルから数百万ドルに及び、「暗号投機」への否定的な認識が一般と政府の間で強まり、これが韓国の規制強化と仮想資産業界の周縁化の主な理由の一つとなりました。

なお、この時点で暗号通貨関連のスタートアップが全面的に禁止されたわけではありませんが、制限業種に指定されたことで高リスクかつ信用されないレッテルを貼られ、税制優遇、融資保証、政策資金支援が受けられず、AIやバイオ医薬品などの業界と比べて明らかに不利な立場に置かれていました。

Tracxnのデータによると、今年7月23日時点で韓国のブロックチェーン技術分野で新たに設立されたスタートアップはわずか1社でした。2018年には韓国で170社のブロックチェーン技術スタートアップが設立され、これは過去10年間で最多となっています。また、暗号バブルが続いた2021年と2022年にも100社以上のブロックチェーン技術スタートアップが設立されました。

韓国ブロックチェーン技術分野の企業設立数の前年比

さらに、2025年7月までに韓国のブロックチェーン技術企業は4回のエクイティファイナンスで合計1,330万ドルを調達しましたが、昨年同期には17回のファイナンスで3,230万ドルを調達しており、前年比で58.82%減少しています。

新政策の動機：規制体制の整備とデジタル資産のトレンド

中小企業ベンチャー企業部が発表した公式声明では、新たに改正された「ベンチャー企業法施行令」は、一方でグローバルトレンドに合致したデジタル資産エコシステムを構築し、イノベーション産業の育成基盤を築くこと、他方で金融当局と連携し透明な市場秩序を確立し、ユーザー保護を最優先にすることを明確にしています。これらはそれぞれ、仮想資産のグローバルトレンドの激化という時代背景と、暗号通貨市場の規制および投資家保護の必要性を示しています。

今回の改正案のキーパーソンである中小企業・スタートアップ担当大臣の韓成淑氏は、この規制改革は韓国をグローバルなデジタル資産トレンドに合わせ、将来の成長エンジンを確保することを目的としていると述べています。彼女は「私たちは政策資源を集中し、リスクキャピタルが円滑に流れる透明で責任あるエコシステムを構築し、新興産業の発展を支援します」と述べました。

中小企業ベンチャー企業部長官 韓成淑

このように、今回の政策緩和は、デジタル資産業界のグローバルな地位の大幅な向上だけでなく、韓国の成熟した規制環境とも密接に関連しています。2021年には韓国が「特定金融情報法」を改正し、仮想資産企業の報告制度を導入、仮想資産サービスプロバイダーに金融機関と同様のAML/KYC義務を課しました。2024年施行の「仮想資産利用者等保護法」では、金融規制当局に実質的な監督・検査・制裁権を付与し、ユーザー資産保護や不正取引防止のための具体的な義務を定めています。

この2つの重要な法律改正により、「マネーロンダリング対策監督」と「ユーザー保護/市場秩序」の両面で法的・規制上の空白が埋められ、従来の「規制が不十分なので一律禁止」という政策論理が弱まり、現行の規制能力で産業支援が可能になりました。

禁令解除、韓国暗号VCに春到来か

制限令の解除は、間違いなく韓国の暗号産業に新たな活力をもたらすでしょう。

今後、暗号スタートアップは国内ベンチャーキャピタルや政府支援をより容易に受けられるようになり、資金調達コストや難易度が下がり、DeFiやブロックチェーンインフラなどの分野で新たなアーリーステージの資金調達機会が生まれ、国内ブロックチェーン産業の成長と海外での影響力拡大が加速します。

韓国の暗号ベンチャーキャピタルにとっても、より積極的に資本を展開し、アーリー段階のDeFiやブロックチェーン基盤・インフラプロジェクトへの投資を拡大できるようになります。注目すべきVCとしては、以下が挙げられます：

Hashedは、韓国で最も影響力があり、ブロックチェーン/暗号に特化したアーリーベンチャーの一つで、ソウルに本社を置き、シリコンバレーやシンガポールにも拠点があります。Hashedは長年にわたりグローバルおよび国内の主要プロジェクト（公式サイトや投資ポートフォリオにはAptos、Injectiveなどのチェーン/プロジェクトが掲載）に参加し、韓国でハッカソンやエコシステム構築イベントを開催しており、韓国Web3エコシステムの重要な資本推進者かつ「コミュニティ-投資」連携の模範です。

Dunamu & Partnersは、Upbit運営会社Dunamuが設立した投資子会社で、ブロックチェーン/FinTechおよびより広範なテックスタートアップに大規模な外部投資ポートフォリオを持っています。Dunamu自体が大手取引所運営会社であるため、戦略的投資家としてプロジェクトに市場流動性のサポートを提供できる可能性があります。

Kakao Venturesは、Kakaoグループのベンチャーキャピタルで、長年にわたりブロックチェーンや決済分野への戦略投資を行っており、KakaoのトラフィックやKaiaエコシステムを活用して投資先プロジェクトにトラフィック、基盤チェーン、商業化チャネルを提供しています。韓国での展開を目指すオンチェーンプロジェクトにとって、Kakaoグループは重要な戦略的資本およびエコシステムの入口です。

さらに、韓国の金融システムや大手テック財閥も暗号分野での展開を加速しています。銀行系および機関系の投資プラットフォームであるKB Investmentは、資金力、コンプライアンス、リスク管理能力を活かし、投資先企業に長期成長に必要な機関資本やチャネルリソースを提供できます。また、Samsungの戦略投資部門であるSamsung Nextは、産業レベルの技術と市場連携で知られ、ブロックチェーンインフラやアプリケーションプロジェクトに技術的な裏付け、グローバルリソース、エコシステムレベルの協業機会を提供しています。