a16zが最新投資したPIN AIの詳細解説：Web3でAIの構図を塗り替える

PIN AIは、開発者が有用なAIアプリケーションを構築できるオープンなAIネットワークです。

執筆：黒米

Meteorite Labsの指導のもと、数百のWeb2 AIアプリケーションの体験交流に基づいて本研究を完成できたことを光栄に思います。

PIN AIはa16z Crypto Startup Accelerator秋季プログラムの選出プロジェクトであり、シードラウンドで1,000万ドルの資金調達を行いました。有名なVCとしてa16z Cryptoのほか、Stanford Blockchain Accelerator、Hack VC、Foresight Venturesが参加しています。エンジェル投資家にはNEAR Protocol創業者Illia Polosukhin、Gitcoin共同創業者Scott Moore、Solana Foundation会長Lily Liu、SUI/Mysten Labs CEO Evan Cheng、WorldcoinリサーチエンジニアDCBuilderなどが含まれます。

PIN AIの3人の共同創業者が共同執筆した記事を読んだばかりですが、これは最近Sahara以外で最も私を惹きつけたWeb3 AIプロジェクトであり、アプリケーションシナリオが非常に興味深いです。

PIN AIは、開発者が有用なAIアプリケーションを構築できるオープンなAIネットワークです。「Useful AI Applications」、<有用>がそのプロダクトの中心です。Web2のMultiOnやJace.aiのようなAI Agentに似ており、ユーザーの日常生活に役立つアプリケーションを提供し、ユーザーの意図を実現することを目指しています。例えば、オンラインで商品を購入したり、旅行を計画したり、投資行動を計画したりすることができます。

Jace.aiについて簡単に紹介します。これはブラウザタスクを自律的に完了できるAI Agentで、LLMと独自モデルAWA-1（Autonomous Web Agent-1）に基づいており、後者はAIがウェブページ上で操作を実行することをサポートします。

Jaceの最大の能力は、タスクを自律的に計画し、ユーザーに代わってブラウザ内で操作を実行できることです。

アプリケーションシナリオを例に挙げると、「9月20日に北京に1週間旅行に行く予定で、予算は5,000元。計画を立ててほしい」とJaceに伝えると、Jaceは自動的に旅行計画を立て、訪れる観光地、宿泊するホテル、食べるべきグルメを含みます。もしこの旅行計画に同意すれば、次にすべての観光地の予約を手伝い、Meituanでコストパフォーマンスの高いホテルを見つけて注文します。私は個人情報を入力し、ワンクリックで支払いをするだけで済みます。

実際、PIN AIが目指しているのも非常に似ており、生成型AIとの最大の違いは、この種のAIプロジェクトが主にユーザーの日常生活に焦点を当てている点であり、仕事ではありません。

一、PIN AIの設計思想の解剖

簡単に言えば、PIN AI = AI + DePIN

PIN AIネットワークは2種類のAIで構成されています：

• Personal AI（個人AI）：パーソナライズされたAI Agentで、ユーザーの好みにリアルタイムで適応します。これはユーザーと代理サービスの接点であり、コーディネーターのような役割です。ユーザーはこれをスマートフォンやパソコンにダウンロードして使用できます。
• Agentic Services（代理サービス）：Web2プラットフォーム向けにオンチェーンで構築されたAI Agentで、いくつかの主要なWeb2プラットフォーム上でタスクを実行でき、その実行過程と完了状況はブロックチェーン上に記録されます。
• 公式はExternal AI（外部AI）にも言及しており、将来的には他のLLMやWeb2 AI Agentとのインタラクションをサポートする可能性があります。

PIN AIアーキテクチャのコア：

PIN Protocolは、DePIN分散型データストレージネットワークであり、誰でも自分のデバイスをネットワークに接続し、データを共有できます。BERTベースのモデルを統合しており、ユーザーデータの各処理段階でデータを匿名化し、プライバシーを確保しデータ保護規制に準拠しています。

Personal AIはその中に構築されています。一方でPersonal AIにパーソナライズされたデータを提供し、他方で代理サービスに最も関連性の高いデータを提供します。

PIN Protocolは3つのコンポーネントで構成されています：

1.プライベートストレージおよび計算レイヤー：分散型でデータを保存し、ユーザーが共有するデバイスデータ（写真、動画などを含む）を安全に保存し、最も関連性の高いデータをPersonal AIや代理サービスがいつでも利用できるようにします。ユーザーは自分のデバイスをこのネットワークに接続し、デバイスデータを提供してネイティブトークン$PINの報酬を得ることができます。

2.データコネクタ：zk技術を用いてネットワークに接続されたユーザーデータを追跡・検証します。これはPINネットワークのノードに相当すると考えられ、ノードオペレーターは$PINトークンをステーキングして検証を行う必要があり、一部のトークン保有者はノードにトークンをステーキングでき、両者ともステーキング報酬を得ることができます。

3.代理リンク：Personal AIと代理サービスをマッチングすることを目的としています。代理レジストリとトランザクションメカニズムで構成され、前者はパフォーマンス指標を追跡し、後者は各代理サービスのコスト、パフォーマンス、完了品質に基づいてPersonal AIと代理サービスをどのようにマッチングするかを「考え」ます。

ユーザー利用モデル / ビジネスロジック：

ユーザーが利用する際、具体的なニーズを提示した後、PIN AIは以下のステップで進行します：

ステップ1：Personal AI —— ユーザーのニーズを収集

ユーザーはPersonal AIにニーズを伝え、Personal AIはそのニーズをPIN Protocolに転送します。

ステップ2：PIN Protocol —— タスク実行前の準備

ユーザーの意図を具体的なステップに分解し、最も適用可能でコストパフォーマンスの高い代理サービスを見つけ、最も関連性の高いデータを検索して代理サービスに提供します。（複数のWeb2プラットフォームが関与する場合は、意図を異なる代理サービスに分割する必要があります）

ステップ3：代理サービス —— 具体的なステップを実行

ステップ4：PIN Protocol —— ユーザーに結果をフィードバック

日常生活のニーズは多くの場合金銭取引を必要とするため、PIN AIでは資金の流れは次のようになります：

ユーザーはPIN ProtocolにGas費用を支払います（おそらく今回の意図トランザクションをアクティベートするためと推測されます）。PIN Protocolはまずユーザーの意図を分解し、最も関連性の高いデータを代理サービスにインデックス化・送信するため、代理サービスがタスクを完了した後、一部のサービス料をチップとしてPIN Protocolに還元します。

したがって、PIN Protocolと代理サービスの両方がユーザーからのサービス料から手数料を得ることができます。

例を挙げます：

ユーザーはPersonal AIをパソコンやスマートフォンにダウンロードし、「Amazonで最も安いGTX 3080グラフィックカードを購入したい」とPersonal AIに伝え、費用（購入費+サービス料+PIN Protocol Gas費）を支払います。

Personal AIはこのニーズをPIN Protocolに伝えます。

ユーザーの意図を理解し分解した後、PIN Protocolはユーザーの意図を具体的なタスクステップに分解し、最も関連性の高いデータとともに代理サービスに送信します。Amazonショッピング専用の代理サービスが数十存在する可能性があるため、PIN Protocolはそれらのコスト、パフォーマンス、過去の完了状況を総合的に考慮し、最も適したものを選びます。

代理サービスはAmazonで最もコストパフォーマンスの高いGTX 3080グラフィックカードを見つけて注文します。完了後、意図分解費とデータ呼び出し費をPIN Protocolに支払います。PIN ProtocolとPersonal AIはユーザーに結果をフィードバックし、PINトークンを報酬としてユーザーに送信します。

ネットワーク参加者

Personal AIユーザー：パソコンやスマートフォンにPersonal AIをインストールし、個人データをPIN Protocolに接続することでPINトークンの報酬を得ることができます。

価値流通ユーザー：上記の利用モデルのように、ユーザーが価値ある取引を行った場合にもPINトークンの報酬を得ることができます。

PIN Protocolノード：ネットワークに接続されたユーザーデータを追跡・検証します。オペレーターはステーキングが必要で、トークン保有者はノードにトークンをステーキングでき、両者ともステーキング報酬を得ることができます。

代理サービス：開発者はサービス料を稼ぐことができます。

二、コア開発チーム

Davide Crapis - 共同創業者

ブロックチェーンプロトコル設計のバックグラウンドがあり、AIのバックグラウンドも一部持っています。

かつてLyftでシニアデータサイエンティストを務め、インセンティブ配分アルゴリズムを設計・実装し、毎年乗客とドライバーにxxドルの成長インセンティブを配布しました。退職後は独立研究者としてインセンティブスキームとトークン配分を研究。PIN AI創業前はEthereum Foundationで「堅牢なインセンティブ」分野のリサーチサイエンティストを務めていました。

「消費者の投資/クレジット商品金利感応度」の機械学習モデルを開発した経験があり、コロンビアビジネススクールで4年間機械学習分野の研究員・指導者を務めました。Web2開発者コミュニティ「South Park」にも参加し、大規模言語モデルとブロックチェーンの交差分野を探求しました。

Ben Wu - 共同創業者

オペレーションのバックグラウンドがあり、戦略的方向性やAIプロダクトのアイデアを提供している可能性があります。

MIT卒業、Y Combinatorの卒業生。PIN AI創業前はYahooの戦略データソリューション部門でデータベースおよびオペレーションディレクターを務め、大規模データプロジェクトの運営と管理を担当していました。

Bill Sun - 共同創業者、チーフサイエンティスト

クオンツトレーディングとAIのバックグラウンドを持っています。

スタンフォード大学数学博士。Google DeepMindでAI研究を行った経験があります。ウォール街の資産運用会社でAI/クオンツトレーディング株式投資マネージャーを務めたことも。AI研究組織AI+Clubを設立し、AI技術コミュニティAGI Houseを創設。a16z scout fundのエンジェル投資家でもあります。また、Generative Alphaの創業者であり、エンタープライズ向けAIソリューションを手掛けています。

三、考察とまとめ

第一次産業革命では機械が両手を解放しました；

第二次産業革命では電力が昼夜の境界を打ち破りました；

第三次産業革命ではインターネットが現実と仮想の境界を融合させました。

AIの登場は第四次産業革命の象徴と広く認識されており、AI Agentはこの探求の旅の乗船券です。私たち一人ひとりが「人機インタラクション」未来へ向かうこの巨大船に乗ることができます。

過去数十年の間、インターネット上では毎日大量の活動が発生し、膨大なデータが生み出されていますが、ユーザーはこれらのデータの所有権を持っていませんでした。

iPhone16が発表されたばかりでApple Intelligenceをもたらしましたが、PIN AIはApple IntelligenceよりもオープンなAI Agentエコシステムを構築するチャンスがあります。

この中で、開発者は革新的なWeb2プラットフォーム代理サービスを開発することで報酬を得ることができ、これがより高性能・高品質なAI Agentを生み出し、イノベーションの波を引き起こします。

そして数十億のスマートフォンユーザーは、パーソナライズされたPersonal AIを利用できるだけでなく、デバイスデータを共有して報酬を得ることができます。

ユーザーのデータがPIN AIエコシステム全体を支えています。これがユーザーの力であり、Web3の出発点——分散化と所有権です。

PIN AIネットワークの実装と、もたらされるインセンティブメカニズムが効果的に機能し、オープンソース貢献者の大軍が流入し、さらに大規模なイノベーションの波が生まれることを早く見たいです。テストネットは10月にリリースされる可能性があり、来年1月にメインネットとTGEが開始される予定で、期待が高まります。